令和4年4月1日の水道法改正に伴い、水道水の水質基準値が見直されたことはご存知でしょうか?
水の安全性が問題視されている昨今、「一体水道水に何が起こったのか?」と気になっている人も多いと思います。
そこで今回は、改正されたポイントを簡単に整理し、まとめてみました。
水道法改正によって何が変わったの?
ざっくり説明しますと、水道水に含まれる「農薬類」の基準値が
「厳しくなったり」「緩和したり」 「新たに設けられたり」 しました。
何のために?
→→→もちろん、安全性のためです。
(でも、その裏で気を付けておきたいこともあります)→→記事後半でお話します
※令和4年の農薬類見直しは以下の通り。
https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000866642.pdf
大前提として
水質基準について私もほとんど知識がなく
「4月から水道水に農薬が入れられるぞ!」
などというまことしやかな噂も耳にしたりして(^^;不安になりましたので、
今回いろいろと資料や動画などで勉強させてもらいました。
まず、大前提として現時点では
「水道水に毒物や農薬が人為的に入れられているわけではありません」。
そうではなく、現在の土壌や水質に、既に含まれている成分についての規制なのです。
(これはこれで問題なのですがねー)
これは、実際に地元の水道局に電話して確かめました(^^;
電話に出た局の方は
「水道水に入れているのは塩素だけです」
とはっきり言っていました。
(その塩素が問題だったりするのですが、それはまた別の話になるので)
もし、水道に塩素以外のものが入るというようなことがあれば、何らかの告知がされるはずです。
とはいえ、それに安心してしまわず、我々は常にそういった情報に敏感でいるべきだし、関心を持っているべきだとは思いますね。
後述しますが、水道事業が外資に渡ってしまうということになれば、また話は変わるからです。
また、水源となる地域によって工場排水などの有無がありますから、当然その地域ごとに水質は異なります。
各自治体水道局のHPにて、水質検査結果を出しているはずですので、ぜひお住いの地域のデータを確認してみてくださいね。
毒性物質や農薬類の種類とは
水質基準項目は、以下の2つに分類されています。
①「水質基準項目」・・・51項目
水質基準は、人の飲用、生活利用上のために水道水が満たしていかなければならないものです。大腸菌、シアン、水銀及びトリハロメタンなど人の健康に影響を与える項目(31項目)と、色、濁り、においなど生活利用上必要となる項目(20項目)が定められています。
②「水質管理目標設定項目」・・・27項目(農薬類含む)
将来にわたり水道水の安全性の確保等に万全を期するため、水道水質管理上留意すべき項目として設定されています。農薬等、人の健康に影響を及ぼす恐れがある項目と、カルシウム、マグネシウム(硬度)等、より質の高い水道水を供給するための項目が定められています。
水質基準値改正のポイント
今回の農薬類改正含め、既に2020年に改正されている毒性物質のことにも軽く触れてみたいと思います。
①農薬114項目中 7種類について
【単位:mg/L】
・カルタップ・・・0.3→0.08へ規制
・ジクワット・・・0.005→0.01へ緩和
・プロチオホス(有機リン系殺虫剤)・・・0.004→0.007へ緩和
・セトキシジム・・・0.4→0.2へ規制
・チアクロプリド・・・(新規) 0.03
・チオシクラム・・・0.03→0.05へ緩和
・ベンスルタップ・・・0.06→0.09へ緩和
私含め、一般人には何のこっちゃな名前の羅列ですね(^^;
ここで注目いただきたいのは、緩和、つまり規制が緩くなっている農薬があるということです。
例えば、規制緩和対象のジクワットは、じゃがいもに使われる除草剤で、劇薬なんだそうです。
ジクワットの毒性について調べてみると、このようなことが書いてありました。
摂取した直後から吐き気や嘔吐などが出現します。その後、腹痛や下痢、便失禁、口の中のただれなどを認めるようになります。
重篤な場合には腎機能障害や肝機能障害、中枢神経障害なども併発します。これらの障害に関連して、尿量の低下、黄疸、けいれんや四肢の麻痺、しびれ、感覚障害、さらには意識障害をみることもあります。
なぜこのような劇薬が規制緩和の対象なのか。
一説にはこれからこの農薬の使用量が増えていく予定だからだともいわれています。
もしそうだとしたら、土壌の残留農薬濃度が上がり基準値オーバーとなる前に、規制緩和して対策しているのかもしれません。
②六価クロム化合物の基準値見直し(2020年)
「六価クロム化合物」は、ステンレス鋼の成分として使用されるほか、金属メッキや皮なめし、顔料などに広く使われる重金属類です。
強い毒性があることで知られ、人体に取り込まれるとがん、皮膚・気道障害、多臓器不全などの危険性があります。
実は、六価クロム化合物については既に2020年の基準値見直しの際、既に
0.05mg/L→0.02mgへと規制強化されています。
2020年の話ではありますが、今回の法改正において
「六価クロムのような毒物が水道に混入している可能性があること自体、あまり知られていない」
という声も多いため、あえて今回取り上げてみました。
ちなみにですが、北海道札幌市の2022年2月の水質検査をみてみると、六価クロムは検出されていないようです。
③有機フッ素化合物の規制が新たに追加(2020年)
これも2020年の話ですが、ものすごく毒性の強い物質だということで取り上げさせていただきます。
有機フッ素化合物は「PFOS および PFOA」という名称で記載されています。
- PFOS・・・ペルフルオロオクタンスルホン酸
- PFOA・・・ペルフルオロオクタン酸
水にも油にも溶けやすいため界面活性剤として利用され、撥水剤、紙の防水剤、泡状消火剤、フッ素樹脂の合成補助剤など私たちの身近な製品に使われていました1)。これらの化合物は、2000年代初めに野生動物、ヒトおよび環境中に広範囲に存在していることが報告され、残留性の高い環境汚染物質です2~5)。
引用:水道水におけるPFOSとPFOAについて|大阪健康安全基盤研究所
PFOSおよびPFOAは、身近なところだとくっつかないフライパンのコーティングやコンビニのおにぎりのフィルム、テイクアウト用の紙コップの内側など、日常的に広く使われています。
・・・って実は怖いものなのね((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル
これら化合物について、2020年以前はまだ毒性評価が定まらないとして、「要検討項目」として位置づけされていました。
しかし、これら化合物は発がん性のある有害物質だということが徐々に明らかになり、PFOSおよびPFOAを規制する動きが世界中で起こっています。
フッ素コーティングされた食品容器等から毒物が体内に取り込まれやすい
↓
体に取り込んだら解毒しにくい
↓
これらの生産工場から流れた化合物は土壌にたまりやすい
↓
土壌にたまった化合物は河川へと流れ、我々の水道水に入ってくる
↓
体に取り込んだら解毒しにくい
こういう流れですね。
海外でも、EUや米国では包装容器および水道水におけるPFOSおよびPFOAを規制する動きが出てきています。
また、企業の取り組み例としてはマクドナルドが2025年までにすべての包装容器からPFOSおよびPFOAを撤廃すると発表しているとのこと。
さて、日本においてPFOSおよびPFOAの水質基準値は50ng(0.00005mg)です。
この数値も国際基準というものが定まっていないため、
米国は70ngだったり、かと思えばカナダは600ngまでOKとしたり、バラバラです。
まだまだこれから検討されていく案件なのかなと思いますね。
ちなみに、札幌市の水質検査をみると、この「PFOSおよびPFOA」は検出されていませんでした。
これも、地域によって違いがあるかと思うので、お住いの水質はどうなのか、ぜひチェックしてみてください。
結局安全なの?
さまざまな規制や緩和がみられる今回の改正水道法ですが、結局のところ、
「無毒とはいえない」
ことだけは確かでしょう。
また、フッ素化合物のように、近年問題視されるようになったばかりの項目も実際にあるわけですから、やはり飲み水とするなら何らかの対処はしたいところです。
【水道水の毒物除去】
- 無農薬みかんの皮やビタミンCなどを入れる・・・塩素の中和作用
- 備長炭を入れる・・・有害ミネラルや化合物を吸着させる
- 10分以上の煮沸・・・塩素やトリハロメタン(塩素由来の副生産物)、農薬類の除去(ただし、化合物は除去できない)
- 浄水器、浄水ポット・・・フィルターの種類※によって除去できる物質が異なる
※フィルターの種類
ちなみに、我が家のビルトイン型浄水器は「中空糸膜フィルター」でした。
調べると、だいたい蛇口タイプの浄水器はこのタイプで、ポット型は活性炭フィルターが一般的のようですね。
逆浸透膜フィルターは、化合物の除去だけでなく、ミネラル類も除去されてしまうデメリットや、比較的高価になってしまうといったデメリットもあるようです。
お住まいの地域の水質が気になる方は、検討の余地があるかもしれません。
これ、いろんな方が紹介していて気になってる浄水ポットです。
(内海聡医師もご自身のセレクトショップにておすすめしていました)
水道水、これが本当の問題か
今回いろいろ調べてみて分かったこと。
まず1つは、現状として水だけでなく、土壌も人工的な化学物質で汚染されているということです。
これは農業における化学肥料や農薬の問題、工業における金属製品や食品包装の問題など、さまざまな要素が絡み合っています。
化合物が自然に分解されず、蓄積してしまうことを知り、これは思った以上に深刻な問題なのではないかと感じました。
2つ目に、日本の水道事業に外資が入ってきつつあること。
我々日本人の命の源である水道を、外資が入った企業に任せるとどうなるのでしょうか。
水道料金が値上がりしたりしないでしょうか。
利益追求にばかり走らないでしょうか。
ちゃんと水質を保ってくれるのでしょうか。
上記リンクの記者さんも書いてますが、もっと広く国民に分かる形で情報はオープンにしていただきたい。
気付いたら、我々は外国にどんどんお金も健康も奪われかねない状況に立っているのですから。
おわりに
2022年4月の水質基準改正により、巷ではさまざまな噂が飛び交っています。
蓋を開けてみると、4月から毒が入れられるというわけではありませんでしたが、日本の土壌や河川には毒性の強い農薬や化合物が存在していることがわかりました。
それらの根本原因はどこにあるのでしょうか。
調べても、なかなか答えは見つかりません。
浄水器などで毒物をシャットアウトするのももちろん大事ですが、この問題は国をあげて議論していかなければならないと強く感じました。
もっと水道問題について詳しい方、ほかにも問題があるよって方がいましたら、ぜひコメントで教えていただけると嬉しいです。
次回以降は、「ならペットボトルの水はどうなってる?」について調べていこうと思ってます。
【参考動画】
今回は3本の動画を参考にさせていただきました。
・【水道水の水質基準】【水質管理目標設定項目】変わる意味【吉野敏明】 - YouTube
・水道水質基準が2022年4月1日から変更になりますがもうすでに時遅しw(アキラボーイズストーリー#140) - YouTube
・2022年4/1水道法の改正について 対処はしないといけないけど焦らなくても大丈夫 - YouTube
【参考記事】
・知らなかったじゃすまない!有害物質・六価クロムの危険性とは | BUILD
・飲料水中の有機フッ素化合物の規制と現状 | 一般財団法人 東京顕微鏡院
・【環境】化学物質PFASとは何か? 〜マクドナルドやアマゾンが使用禁止を決めた背景やPFOAとの違い〜 | Sustainable Japan