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牛乳の知られざる問題 その4「飼育環境を知る」

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※ご来訪ありがとうございます。当ブログにはじめてお越しの方は、まずこちらを読んでいただけるとうれしいですm(__)m

「牛乳の知られざる問題シリーズ」その1とその2では、世間一般で知られる牛乳の認識とは真逆の「牛乳有害説」について言及し、その3では牛乳の歴史について軽く触れてきました。

今回は牛乳問題のまとめとして、「乳牛の飼育環境」について、リサーチできる範囲でみていこうと思います。

乳牛の飼育環境を知る

牛乳問題の記事ををはじめてご覧になる方は、よろしければ「その1」より目を通していただけると幸いです。

 

指摘されている牛乳の健康リスクに触れたその1【前編】

↓ ↓ ↓

nanakama.hateblo.jp

その2【後編】はこちら

↓ ↓ ↓

nanakama.hateblo.jp

 

その3では、牛乳が学校給食や粉ミルクに取り入れられるようになった歴史を振り返りました。

↓ ↓ ↓

nanakama.hateblo.jp

 

本記事「その4」では、乳牛がどのように飼われ、どのような生涯を送るのかについて、公的なデータや現場取材したニュース記事などを参考にまとめていきます。

 

乳牛の一生

ここでは、一般的な乳牛の一生を簡単にご紹介します。

※参照:

親子で学ぶちくさん|飼料・畜産情報|ジェイエイ北九州くみあい飼料株式会社

乳牛のライフサイクル(誕生〜分娩まで)

 

【哺乳期】

仔牛が産まれるとすぐ母牛と離し、6~8週にわたり母牛の初乳または代用乳を哺乳瓶で与えられる

【哺育記】

誕生後約3カ月までは、ほぼ人工乳で育つ

【育成期】

離乳後から12カ月過ぎまでは牧草や穀物系飼料を食べて育ち、成熟を待つ

【妊娠・出産】

最短の出産適齢期(生後2年)に向け、生後14カ月頃人工授精させる

【分娩後・泌乳期と種付け】

分娩後およそ300日にわたり搾乳し、市場出荷される。なお分娩40日後には再度種付けを行い(人工授精)、次の分娩に備える(これを13~14カ月ごとに繰り返す)

【5~6年後・肉用牛として出荷】

乳量の生産が落ちる5~6年後を目安に、肉用牛として出荷される

 

 

畜産用の乳牛(メス)は、当たり前ですが本来飲むべき仔牛のためではなく、人間のために一生妊娠・出産を続けることで牛乳を出し、生涯を終えることがわかりました。

 

ちなみに、オスの仔牛が産まれた場合は、食用牛となるか、種牛として育成されていくそうです。

 

次に、乳牛がどのような飼育環境で育つのか、みていきましょう。

乳牛の飼われかた

乳牛の飼養方式は「繋ぎ飼い」「放し飼い」「繋ぎ飼い+放し飼い」、そして「放牧」があります。

 

【繋ぎ飼い】

日本においては最も一般的な乳牛の飼養方式。(全体の約7割(※)

チェーンやスタンチョンと呼ばれる鉄製のパイプのようなもので乳牛を繋いで飼育する。

 

固体管理がしやすい、一頭当たりの施設面積が少なく済むなど管理側のメリットがある反面、運動不足やストレス、糞尿による衛生管理などが問題視されている

乳牛の1日の排糞回数は15回前後、排尿回数は8回前後になります。kgとLで単位で換算すると、1日排糞量は約20kg~30kg、排尿量(L)は20Lとなります。

引用:乳牛の1日の生活スタイル

 

2017年公益社団法人畜産技術協会データによると、その中でずっと牛を繋ぎっぱなしの酪農場は、約3割に及ぶ)

 

【放し飼い(フリーバーン、フリーストール)】

・フリーバーンは、牛舎の中で繋がず、牛たちは自由に動き回ることができる

・フリーストールは、牛舎の中で繋がず、休息スペースが一頭分ずつ区切られている

 

放し飼いは牛のストレス軽減や、管理側の給餌や搾乳の労力が少ないというメリットがある反面、固体管理が難しい、設備費がかかるなどのデメリットもある

 

【放牧】

放牧

その名の通り、搾乳時や就寝時以外は屋外の広い敷地で乳牛を放牧する方法。

(日本の約3%の酪農家が放牧スタイル)

 

放牧は牛のストレス軽減や牧草の購入費などの軽減などのメリットがある反面、一頭当たりの搾乳量が低下、広い敷地が必要となるなどコスト面での問題点がある

 

 

牛乳といえば、なんとなく放牧スタイルを想像しがちでしたが、実は繋ぎ飼いが全体の約7割を占めていることを知りました。

 

繋ぎ飼いにより行動が拘束されることのストレスに加え、自由に体を動かせないことによって傷ができたり、病気になったりする問題の深刻さは、以下の記事を読んで考えさせられました。

 

gendai.ismedia.jp

 

その点では、酪農が盛んなヨーロッパのほうが規制が厳しく、繋ぎ飼いしている酪農家よりも、放し飼いや放牧を採用する酪農家のほうが多くなってきているそうです。

www.hopeforanimals.org

 

除角や断尾

【除角】

通常、乳牛はメスにも角が生える。

飼育者への安全配慮やほかの牛との接触によるケガを避けるため、生後半年までに除角を行う場合が多い。

 

除角の方法は、まだ角が生えたてのうちに、専用の焼きゴテやガスバーナーなどで角の部分を焼き固める方法が一般的

 

(2017年の調査によると、日本の酪農家の約9割が除角を行っている。そのうち、約45%生後2カ月を過ぎてから行っている

 

【断尾】

成牛の尾は約55~60cmもあり、ハエなどの虫を追い払うなどの役割があるが、始終振り回すために尾房が糞尿溝に落ちやすい。

尾から糞尿がまき散らされるのを防ぐため、断尾(だんび)をする場合がある。

 

しかし、近年ではその賛否が問われ、農林水産省では断尾ではなく、尾房を短くカットする方法(トリミング)を推奨している

(2017年の調査によると、日本の酪農家の約8割は断尾していない)

 

 

これもイメージ先行でしたが、乳牛にも角が生えるとは知らなかったです。

除角は生後半年までに行うのが理想ということですが、いくら生えたてでも神経が通っているため、苦痛は免れないとのこと。

 

実際には角が成長してしまってから麻酔なしで除角を行うこともあるようで、何ともいえない思いになります。

www.excite.co.jp

 

断尾についても、効率性という点ではやむを得ないのかも知れませんが、やはりそうしないで済むならしないでいただきたい、と個人的には思います。
近年は断尾する酪農家が減ってきているようで、少し救われる思いになりました。

 

ところで以下のリンクは、除角も断尾もせず、放牧スタイルで、自然交配で育てている酪農家のサイトです。

日本では少数派なのでしょうが、調べるとちゃんとあるのですね。

このような酪農家が主流になることは難しいのでしょうか…。

ichirofarm.com

 

乳牛の飼料

もともと、牛の主食は牧草

畜産乳牛の飼料も主体は牧草だが、乳量を増やしたり脂肪分を高めたりするため、穀物系の飼料をプラスしている。

 

畜産においては、牧草主体の飼料を「粗飼料」穀物主体の飼料を「濃厚飼料」、または「配合飼料」などと呼ぶ

 

【粗飼料】

粗飼料は、①チモシーやクローバーといった生の牧草、②乾草、③サイレージ(乳酸発酵させた牧草)に分かれる

 

【濃厚飼料】

トウモロコシ、大麦、大豆、小麦ふすま(小麦の表皮を原料とした粉末)、油粕、ビール粕など、エネルギーやタンパク質を含む飼料

 

 

本来は草食である牛に、濃厚飼料を与えることについては賛否あるようですね。

さらに、濃厚飼料の原料のほとんどが海外からの輸入品であること、遺伝子組み換え作物である可能性が高いというこに対しても、問題視する声があるようです。

 

また、「BSE」(狂牛病)について見聞きしたことがある人も多いのではないでしょうか。

 

これは肉骨粉という飼料を牛に与えたことで広まったといわれています。

肉骨粉とは、屠畜された動物から人間が食べられる部分を除いた、骨、皮、内臓などを化学処理し、飼料として加工したものです。

 

現在は禁止されていますが、以前はその肉骨粉に、牛の残物も含まれていました。

(つまり、結果的に共食いをさせていたことになる)

 

日本では2001年に乳牛からBSEが発見されたのが第1例として知られていますが、その後の飼料規制により、我が国におけるBSE発生例はみられなくなったということです。

 

ただし、これはあくまでも「日本の乳牛」の場合です。

輸入の乳製品や食肉の飼料や、国内外のペットフードにもこの肉骨粉が使われている可能性はあります。

これについては、また別な機会にしっかりリサーチし記事にしたいと思います。

 

サイレージを貯蔵する施設が「サイロ」だと初めて知りました(・_・;)

サイロ

おわりに

「牛乳の知られざる問題」その4は、乳牛の飼育環境について簡単にまとめてみました。

 

人間のために品種改良を重ねられ、妊娠・出産・搾乳の繰り返しでその生涯を終える乳牛。

その過酷さもさることながら、効率化を良くするため、除角や断尾をする場合があるということを今回初めて知りました。

 

今までいいだけ乳製品を摂ってきた自分が、このようなことを言えた立場ではないことは承知しています。

 

しかし、何事も表だけでなく、裏の部分も合わせて知ることはとても大事なことではないかと思います。

 

その1~その4を通し、牛乳有害説やあまり知られていない歴史、そして飼育環境と、いわゆる「裏の顔」を中心にお伝えしてきましたが、いかがでしたでしょうか。

 

食と健康を見直したいと考えている方に、この情報が何かのお役に立てれば幸いです。

 

今回で牛乳シリーズはいったん終了し、次回以降は食肉の話を…と考えていますが、その間に少しひとりごとを挟むかもしれません。

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

コメント、ブコメもありがとうございますm(__)m

 

【参考】

・「農林水産省  本格的議論のための酪農・乳業の課題」

https://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/tikusan/bukai/h2603/pdf/05_data5_rev3.pdf

・「公益社団法人畜産技術協会データ」

http://jlta.lin.gr.jp/report/animalwelfare/H28/factual_investigation_cow_h28.pdf

・「農林水産省 乳用牛の断尾について」

https://www.maff.go.jp/j/chikusan/sinko/attach/pdf/animal_welfare-69.pdf

・「乳牛のライフサイクル」

乳牛のライフサイクル(誕生〜分娩まで)

・「乳牛のエサの種類と食事量」

乳牛のエサの種類と食事量

・「酪農ジャーナル電子版 飼料の種類」

飼料の種類 « 酪農ジャーナル電子版【酪農PLUS+】

・「農林水産省 牛肉骨粉の養魚用飼料としての利用再開案」

https://www.maff.go.jp/j/council/sizai/siryou/38/pdf/ref_data.pdf

・「農林水産省 我が国における飼料規制について」

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000148123.pdf