明日を生きるごはん

テレビでは知り得ない食と健康の話

牛乳の知られざる問題 その3「学校給食と粉ミルク育児」

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※ご来訪ありがとうございます。当ブログにはじめてお越しの方は、まずこちらを読んでいただけるとうれしいですm(__)m

昔から議論の的となってきたにも関わらず、なぜかあまり一般的に認知されているとはいえない「牛乳有害説」。

その1とその2では、指摘されている牛乳の健康リスクについてご説明してきました。

今回は、牛乳が日本で飲まれるようになった歴史的背景を紐解いていきます。

戦後の日本と牛乳

指摘されている牛乳の健康リスク、カゼイン製法乳糖不耐症について書いた【前編】はこちらよりどうぞ。

↓ ↓ ↓

nanakama.hateblo.jp

残留ホルモン残留抗生物質カルシウムパラドックスについて書いた【後編】はこちらです。

↓ ↓ ↓

nanakama.hateblo.jp

 

ここまで牛乳の健康リスクについて考えてきましたが、

「そんなにリスキーなのにも関わらず、どうして世の中に出回っているのか?」

という疑問にぶち当たります。

 

ところで2021年末には、我が国の首相自ら「牛乳を飲んで」と勧めているニュースがありました。

これに対し、違和感を覚えたという人も中にはいたのではないでしょうか。

「年末年始は牛乳飲んで」 岸田首相:時事ドットコム

 

牛乳にまつわるさまざまな事情を知るには、戦後のGHQ政策まで歴史を遡ってみる必要があります。

知らないとマズイ小麦問題 その3 で書いた

アメリカ小麦戦略」のことを覚えていらっしゃるでしょうか。

GHQと牛乳給食

敗戦国となった日本は、アメリカの余剰作物である小麦や牛乳(当時は脱脂粉乳)を受け入れざるを得なかった事情がありました。

 

1947年、GHQ連合国軍総司令部)は日本人の栄養摂取量が足りていないとし、カルシウムを豊富に含む牛乳を食事に取り入れるように、保健所での栄養指導を開始します。

 

このとき、保健所勤務できる者の条件は「乳業メーカーの専従栄養士」であることでした。

つまり、ここで既に「牛乳を主軸とした栄養指導」があったことが暗に伺えます。

 

そうして1954年に「学校給食法」が制定され、1958年よりパンと牛乳を取り入れた給食が小中学校で始まったのです。

 

ここから政府乳業メーカー学校の三つ巴で牛乳賛美のコマーシャルを大々的に行うようになります。

 

当時はアメリカの言いなりであったこと、今ほど牛乳の問題点が明らかになっていないことを考えると、致し方ない点もあるでしょう。

 

しかし、さまざまな問題点が指摘されている今もなお、牛乳賛美の傾向が一向に変わらないのはなぜでしょうか。

 

参考にさせていただいたマクロビオティック食品のサイト

「IN YOU」さんより一部引用させていただきます。

農林水産省特殊法人である「農畜産業振興事業団」は 巨額の補助金を乳業メーカーに支給しています。乳業メーカーはこの補助金をさらに学校に支給しているのです。 

 

乳業業界とそれに癒着する農林水産省は学校を牛乳の宣伝場所にしていると言えます。牛乳公害を告発しても、もみ消されるのが関の山です。誰も800億円もの「産業」にはかなわないのです。

引用:

【連載#04:牛乳神話を疑え】学校給食に牛乳が出され続ける謎の理由を解明する

 

つまり、日本では既に乳業の巨大マーケットが出来上がってしまっているというわけですね。

これは小麦に関しても同じことがいえますが、牛乳の場合は育児にも大きく関わっているため、さらに根深いものになっています。

粉ミルクと「スポック博士の育児書」

スポック博士の育児書


GHQは、学校給食のほかに、日本の「母乳育児」にも干渉しました。

 

当時、世界中で大ベストセラーとなっていた

「スポック博士の育児書」(第1版 1946、暮らしの手帖社翻訳版1966)をご存知でしょうか。

これは母乳育児ではなく、粉ミルクによる哺乳瓶育児を勧める内容です。

 

GHQはこれを利用して粉ミルク育児の教育を進めていきました。

今まで母乳で育てていたものが、粉ミルクに切り替えるということは、つまり。

そうです、ここでもマーケットが出来上がるのです。

 

そして、それをさらに強固にするために

母子健康手帳」を作りました。

 

しかも、その母子健康手帳を作ったのは乳業メーカーだというではないですか。

当時は手帳に「牛乳(粉ミルク)を飲ませましょう」と明記され、大手乳業メーカーの広告が堂々と掲載されていたそうです。

 

そんな粉ミルク育児の教本となった

「ベンジャミンスポックの育児書」ですが、

衝撃の後日談があります。

 

その後彼はさまざまな抗議を受け、自身も病気になったことをきっかけに

自分の間違いを認め謝罪したのち、

「改訂版を出している」

というのです。

(2004年、第8版の英語版のみ。日本は第6版が最新版として止まっている)

 

最新版(8版)では、

  • 「健康になるには牛乳や肉は必要ない」
  • 「1歳未満の子供は、母乳で育てるのが自然です」
  • 「離乳期を過ぎたら、植物性の食品を食べさせなさい」
  • 「2歳を過ぎたら、牛乳・乳製品をすすめない」

といったように、改訂版の内容はそれまでと真逆の内容だったそうです。

 

 

「全世界の母親に、謝罪する」

 

スポック博士がこのように謝罪する決断をしたのには、晩年ベジタリアンに転向した博士に食事指導を行った日本人の久司道夫(くしみちお)氏によるアドバイスが大きかったといわれています。

 

この一件は世界中に激震が走ったそうです。

しかし、初版の牛乳信仰が独り歩きしてしまっているため、なかなかすべての人に認知するには至っていないのが現状、といえます。

 

それにしてもですよ。

当初のGHQ政策で採用していた、牛乳信仰の元となる教本の内容が覆ったわけじゃないですか。

なぜ、日本では旧バージョンのままアップデートできないでいるのでしょう?

 

今回参考にさせていただいた書籍「牛乳のワナ」によると、

こういった牛乳の害を訴える声は一定数届いているものの、政府の対応はバラバラで、内部では混乱しているようだと著者の船瀬俊介氏は述べています。

 

そして、責任追及を逃れるために、政府が牛乳を勧める記述を母子手帳からこっそり、少しずつ削除していっているというのです。

 

どうでしょう、お母さんたち。

こんなことが世の中で起こっていることをご存知でしたか?

 

当然知っていて、国や学校に働きかけている方もいるとは思いますが、

(調べると、スポック博士の第8版翻訳を出して欲しいという運動もあったようでした)

少なくとも、私は本を読むまでまったく知りませんでした。

 

おわりに

GHQの政策により、学校給食にパンと牛乳を導入し、一気に食文化が西洋化した日本。

それだけにとどまらず、アメリカは粉ミルク育児を推奨することによって、日本に巨大な牛乳マーケットを築き上げました。

 

しかしながら、当時の育児教本すら改定されている現在、今一度政府も企業も学校も、この牛乳問題に真摯に向き合っていただきたいと願って止みません。

 

今回は牛乳の歴史を簡単にですが紐解いてみました。

次回は、正直あまり踏み込みたくないのですが(辛いので)、動物愛護の観点から乳牛の飼育事情などをリサーチしていきたいと思います。

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

【参考】

今回は船瀬俊介氏の書籍に大変お世話になりました。

歴史的背景のリサーチが素晴らしく、ネットでは探してもなかなか出てこないので、とても勉強になります。

 


牛乳のワナ 35の病気を生みだす史上最悪の飲料!? [ 船瀬俊介 ]