※ご来訪ありがとうございます。当ブログにはじめてお越しの方は、まずこちらを読んでいただけるとうれしいですm(__)m
肉をまったく食べない日本人は全体の約9%だそうです。
これが多いか少ないのかの議論は置いておくとして、大多数の人は少なからず肉を食べているということになりますね。
今回は、あまり積極的に報道されない食肉の現状や問題点について、考えていきたいと思います。
食肉の問題点って何?
ここでいう「食肉」とは、鶏肉、豚肉、牛肉といったスーパーなどで手軽に入手できる肉を指します。
当ブログの牛乳シリーズを一通り読んでくださっている方であれば、ある程度想像はつくかもしれませんが、
食肉問題も牛乳と同じように、多面的な視点でみていかなければなりません。
【食肉の問題点】
大きく4つに分けてみました。
例によって全部を1つの記事にすると長くなってしまうので、今回は1と2について取り上げていきたいと思います。
1. 安い肉ほど薬漬け?化学薬品問題
「安い肉」と書いたのには訳があります。
スーパーなどに並ぶ特売の肉というのは、ほとんどが生産効率を上げるため「密飼い」(超過密のスペースで飼育すること)で育った畜産肉です。
自由に動き回ることもままならず、ぎゅうぎゅうのスペースで育つわけですから、ストレスもたまりますし、病気にもなりやすいということが分かります。
そのため、飼料に抗生物質を混ぜたり、成長促進のためにホルモン剤(※)を投与したりするのです。
※日本やEUでは原則禁止しているが、アメリカやブラジルでは使われている
残留抗生物質によるヒト免疫系への影響の懸念は、牛乳の問題記事でも書いた通りです。
残留ホルモンに関しては、乳がんや前立腺がんなどのいわゆる「性ホルモン系のがん」の増加との関連性が指摘されています。
アメリカ牛
2020年に日米貿易協定(FTA)がスタートし、安いアメリカ産の牛肉がたくさんスーパーに並ぶようになりました。
しかし、アメリカで育つ肉牛の99%に、日本やEUでは禁止されている肥育ホルモン剤が投与されている事実については、日本ではあまり報道されていません。
しかも、その残留ホルモン濃度は、日本産の牛肉に比べて160~600倍も高いことがわかっています。
ブラジル産鶏肉
激安系のスーパーではおなじみ、ブラジル産の鶏肉。
小分けパックよりは大袋に入って販売されているイメージがありますね。
わざわざ遠い国から運ばれてくるにも関わらず、激安価格で店頭に並ぶってどういうことだと思いますか?
やはりそこには理由があるんですね。
効率を求め密飼いし、抗生物質とホルモン剤を投与することで大量生産できているからなのです。
ちなみに、このブラジル産鶏肉は現地の人も口にしないといわれています。
アメリカでさえ、ブラジル産の鶏肉を危険視して輸入停止した経緯があるほどなのに、なぜか日本にはたくさん輸入されているのが現状です。
日本はNOを言えない理由でもあるのでしょうか…。
「私はブラジル産を選ばない」
という人でも、気を付けたいのは外食や加工肉です。
産地表示義務のないハンバーグや肉団子、餃子、ソーセージ、肉まん、カップ麺のスープ及び具材、レトルト、その他冷凍食品などなど・・・
あらゆるところにブラジル産鶏肉が入り込んでいても、私たちは気付かずに食べてしまう可能性があるということを、覚えておかねばなりません。
2. 飼料(肉骨粉、遺伝子組み換え作物、農薬など)による問題
多くの畜産業を営む農家は、輸入飼料を与えるのが一般的です。
肉牛は、乳牛同様に牧草中心の「粗飼料」と穀類中心の「濃厚飼料」が与えられます。
(参照:牛乳の知られざる問題 その4「飼育環境を知る」 - 明日を生きるごはん)
豚・鶏に関しては、通常濃厚飼料のみが与えられます。
農薬と遺伝子組み換え
この濃厚飼料の原料となるとうもろこしや大豆などの多くは海外からの輸入で、そのほとんどが遺伝子組み換え作物であることが分かっています。
そもそも、遺伝子組み換えを行う理由は、農薬に強い作物を大量生産するためです。
作物に使われた農薬は自然界で分解されにくく、食物連鎖の中で次第に濃縮されていく工程を「生体濃縮」といいます。
生体濃縮は遺伝子組み換え問題と共に人体への影響が強く懸念されていることをご存知でしょうか。
消費者である私たちは、もっとこの問題を知り、議論していく必要があるように感じます。
生体濃縮について、マンガで分かりやすく書かれた秋川牧園さんの記事も参考になりました。
肉骨粉
牛乳の記事でも言及しましたが、肉骨粉とは屠畜された動物から、人間が食べられる部分を除いた骨・皮・内臓などを化学処理し、粉末状にしたものです。
現在、この肉骨粉を反芻(はんすう)動物である牛に与えることは、BSE(狂牛病)の懸念から日本では禁止されています。
しかし、アメリカでは約75%の牛にこの肉骨粉が与えられているそうです。
こちらもブラジル鶏と同様に、
「私は国産牛しか買わない」
と決めていたとしても、さまざまな加工食品やスープの素(ビーフエキスなどの名前で)などに、使われている可能性が大いに高いのです。
また、国内の豚、鶏には、「牛を除く鶏、豚、魚由来の」肉骨粉を使うことが認められています。
こちらは共食いをしていることと同じことになりますね。
牛由来のものでなければ、BSEの心配はないということで使われているそうですが、これもやはり生体濃縮が懸念されているのが現状です。
この肉骨粉問題は実に深く、ペットフード問題にも繋がっていますので、また改めて記事にしたいと思います。
国産霜降り肉にビタミンAを欠乏させる飼料
「国産高級和牛は、肉の霜降り度合いによってランクが格付けされている」
というのはご存知のことと思います。
いわゆる霜降り肉とは、あえて人為的にビタミンAを欠乏させる飼料を牛に与えて肥育させることによって出来上がるものです。
多くの日本人は、サシの入った「A5ランク」のお肉は最高級であり、とても品質の良い肉だと思っているのではないでしょうか。
ビタミンA不足に陥った牛は目が見えなくなってしまったり、歩行困難、間接浮腫、尿石症などさまざまな病気にかかっているケースが多いそうです。
公益社団法人畜産技術協会のレポートによると、ビタミンAコントロールによる疾病はあるものの、特に問題はないとしています。
また、枝肉に病気がみられた場合は廃棄になるとありました。
過度のビタミンA欠乏に陥った肥育牛には枝肉中に瑕疵(特に筋水腫;ズル)
や内臓疾患(特に肝臓疾患)が見られることがあります。しかし、食肉処理場及
び食肉加工場等においてビタミンA欠乏等に起因する枝肉中の瑕疵や内臓疾患等
が見られた場合は廃棄されますので一般市場に流通することはありません。引用:公益社団法人畜産技術協会「ビタミンAのコントロールを用いた効率的肥育技術Q&A」より
しかしながら、「本当にそうだろうか(絶対に安全といえるのか)?」と疑問を呈する声があるのも確かです。
また、たとえ人体には安全であったとしても、人間の美食のため牛を病気にさせてまで生産している事実があるということを、私たちは今一度考えてみる必要があるのではないでしょうか。
おわりに(その1 まとめ)
スーパーの精肉コーナーに行けば、ずらりと並ぶ牛肉、鶏肉、豚肉などの食肉。
消費者のニーズに応えるために利益を追求した結果、多くの輸入肉は生産効率を上げるためにホルモン剤や抗生物質が使われ、
国内外問わず、多くの飼料に遺伝子組み換え作物や肉骨粉が使われているのが現状です。
また、高級和牛は意図的にビタミンAを欠乏させた飼料を与え、病気になってしまうケースが多いことを知りました。
もちろん、すべての畜産肉がこのように育てられているわけではありません。
さきほどご紹介した秋川牧園のように、飼料や育て方にこだわった畜産農家もちゃんとあります。
しかし、普段スーパーなどで購入する肉が、どんな飼料を与えられどのように育ったかまで、我々が詳細まで調べることは困難なのが現状なのです。
できれば、こういった情報は分かりやすく開示し、利益だけを追求するのではなく、人体への安全性、および屠畜される動物の尊厳についても取り組んでいただきたいと願って止みません。
次回その2では、そもそもの肉自体の栄養価についての疑問や、畜産肉となるために産まれた動物がどのように育ち、食肉となっていくのか、といったところを見ていきたいと思います。
私自身含めですが、この機会に「命をいただくということ」について一緒に考えていただけたら幸いです。
【参考】
・独立行政法人農畜産業振興機構「世界各国の食肉代替食品の消費動向」
https://www.alic.go.jp/koho/kikaku03_001320.html
・東洋経済オンライン
米国産牛肉、「肥育ホルモン」の衝撃的な実態 | 安すぎる食品には裏がある | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース
・農林水産省「我が国における飼料規制について」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000148123.pdf
・書籍「がまんしない医者の食卓」 内海聡著
がまんしない医者の食卓 (フォレスト2545新書) [ 内海聡 ]